ホーム 日本語 「どなたでもご利用できます」は誤り:直し方5パターン

「どなたでもご利用できます」は誤り:直し方5パターン

「ご利用できる」をどう直すか

「どなたでもご利用できます」「ご乗車できませんのでご注意ください」。左の例のように、「ご〜できる」の形で相手の動作を表現するのは、じつは誤った敬語の使い方です

「ご利用できます」「ご乗車できません」が誤りである理由と、適切な表現に改める方法を書きます。

「どなたでもご利用できます」は誤り

「どなたでもご利用できます」は誤り

「ご〜できる」は謙譲語

「ご利用できます」に含まれる「ご〜できる」は、「ご〜する」という謙譲語の表現が元になっています。謙譲語はへりくだることで相手への敬意を表すもので、自身の動作に使う敬語です。尊敬語の反対ですね。

「どなたでもご利用できます」というとき、「利用する」動作主は、聞き手もしくは読み手ですね。発話者自身ではありません。相手の動作に「ご利用できる」という謙譲語を使うのは、相手をへりくだらせて自分を立てていることになり、失礼な間違いになってしまいます。

「ご〜できる」の適切な使い方

「ご(お)〜できる」は、謙譲語としては正しい形ですので、自身の動作に使うのは誤用ではありません。「なにかお手伝いできることはありますか?」などは「お〜できる」の適切な用例です。

「ご利用できません」の直し方

「ご〜できます」よりも「ご〜できません」のほうが頻繁に見聞きするので、例として「ご利用できません」の直し方を紹介します。

大きく分けて3パターン、そこから派生して計5パターン思いつきました。

  • ご利用になれません
    • ご利用になることはできません
  • ご利用いただけません
  • 利用できません
    • ご利用はできません

「ご利用になれません(ご利用になることはできません)」

「ご利用できません」の謙譲語「ご〜する」を、尊敬語「ご〜になる」に改めた形です。駅のホームで「ご乗車にはなれません」というアナウンスを聞いた方も多いのではないでしょうか(筆者は小田急線で聞いたことがあります)。

または、より丁寧に「ご利用になることはできません」としてもよいのですが、少し冗長な印象を与えるのか、実例を見聞きしたことはありません。

「ご利用いただけません」

謙譲語「〜いただく」を使うパターンです。「謙譲語を使ってもいいの? 『ご利用できません』は謙譲語だから誤りだったよね?」と思われたかもしれません。でも、これでいいんです。

「ご利用する」と「ご利用いただく」の違いは、<動作主はだれか?>という点です。敬語の表現を取り除いて、「利用する」と「利用してもらう」を比べたらわかりやすくなりますね。

「(お客様は)ご利用できません」は、お客様の動作に謙譲語を使っているので誤り。「(私どもはお客様に)ご利用いただけません」は、「利用してもらう」自分自身に謙譲語を使っているので適切。ですので安心して使ってみてください。

「利用できません(ご利用はできません)」

「利用できません」のように、敬語を使わないという直し方もあります。さっぱりしましたね。冷淡に聞こえるかもしれませんが、「(会議室は)利用できません」「(回送電車は)乗車できません」のように、主語が無生物なら適切な表現です。

「もうちょっとだけ丁寧な言い回しにしたい」という場合は、「ご利用はできません」という形も使えます。「ご利用はできません」は「ご利用は」と「できません」に区切ることができ、謙譲語「ご〜できる」を含まないので、誤用ではありません。このときの「ご利用」は利用者に対する尊敬語です。